SED生産はキヤノン単独事業に 量産計画見直しへ

キヤノンは米Nano-Proprietary社との特許係争の解決を目的とし、東芝との折半出資で設立したパネル製造会社「SED」をキヤノンの100%子会社とすることを発表した。東芝は持ち株を全株キヤノンに売却し、SEDパネル製造からは身を引くこととなった。東芝SED社からパネル供給を受けてTVを製造する。

そもそも米Nano-Proprietary社がキヤノンにライセンスしているSED製造必須特許に関し、東芝との合弁会社であるSED社にはライセンス利用を認めなかったことが今回の発端である。問題が長期化することを恐れたキヤノンSED社を完全子会社化し、ライセンス利用を合法化するという力業に出たわけだ。そんなことが可能とは思っていなかったので正直びっくりした。東芝が身を引くとはまったく思っていなかった。

ともかく、これでキヤノンSED製造という大きな賭けを単独で行うこととなった。少なくとも今回の計画変更を受けて、2008年の北京オリンピックへの商品投入という計画は、遅延することが必至となった。

SEDは世に出るのか?に示したように、投入が遅れれば遅れるほどSEDの優位性は損なわれる。東芝SED社の株式をキヤノンに売却することを同意したのも、いつまで立ってもモノにならないSEDの止めどころを探っていたところへの、渡りに船という面もあるのではないかと邪推してしまうのも無理からぬことだろう。SEDの開発、低コスト化がもし仮に当初予定通り順調に進んでいたら、東芝の撤退は絶対になかった。東芝SEDが薄型ディスプレイ実現の究極のディスプレイだと信じ、将来事業の柱と位置づけていたはずである。それが、ライセンス問題を解決するためとはいえ、パネル製造から身を引いてしまうのはなにやら意味深である。

東芝SEDパネルの紹介ページは12日付で閉鎖された。