とても有意な結果が得られるとは思えない全国一斉人間関係力テスト

テレビ朝日全国一斉人間関係力テストをやると言う。事前にPCソフトをダウンロードしておけば、番組に連動して受験できるシステムだ。

人間関係がうまくいかない…誰にも愛されてない気がする…場の空気が読めない…

現代人なら誰もが思い当たるこんな悩み。人の気持ちを推し量り、場の空気を読み、笑いや感動を共有する。そんな「人間関係の能力」を、科学的に生放送で全国一斉にテストしてしまおうという、世界初の試みです。
頭は全然使いません。最先端の研究を元に作られた楽しい問題の数々。それらを解いていくだけで、あなたの人間関係の弱点や長所、相手の「表情」や「話の要点」を把握する力、「雰囲気」や「しぐさ」を察する力、そして「笑い」や「感動」を他人と共有する力がどれだけあるのかがわかります!

人間関係に悩むすべての現代人に贈る、究極にして最大のテスト。
さぁ、あなたも勇気を持って参加してください。

筆者は対人コミュニケーションが極めて苦手な、週末ひきこもりの仮面ニートである。客観的に見て筆者に人並みの人間関係力なんてものが備わっているとはとても思えないので、きわめて悪い結果が出ることを期待して受験してみた。ところが結果は事前の予想を覆すものだった。

結果は103点で、平均よりやや良という感じとなったが、評価方法を見る限りとても有意な結果が出ているとは思えない(あまりに問題がいい加減なので途中でやめようかとも思った)。たとえば、価値の高いものを選択する能力、隠れた絵を見つける能力などに関する問題が含まれていたが、これらが円滑な人間関係に(少なくとも他の設問と同じ重要度で)寄与するとは思えない。幼児の絵のお題を当てる問題は、人間力というよりは観察力、論理的思考力のクイズのようで、東大生が良い点数になるのは当たり前だ。

これらに人間関係力との多少の相関関係があるとしても、いかなる重み付けも行わず他の設問と同等に足し合わせるだけの最終評価に妥当性があるとは思えない。個々の設問には人間関係力と有意な相関を持つものもあるだろう。しかし、それらを人間関係力として数値化する過程はでたらめだ。なにより筆者が平均以上なんてありえない。筆者が平均以上なら、日本国民の半分以上は引きこもりだ

東大生の平均が高かったことを考えると、論理的思考力を測る設問の比重が高すぎたように感じる。その一方、人間関係力の大きな要因となるであろう、人見知りの度合い(初対面の人に話しかけることが出来るか)や、話題選択の妥当性(相手が乗ってくると期待できる話題を選択できるか)や、話題の柔軟性(相手に合わせることの出来る話題に関する知識量、たとえ知らない分野でも話をあわせることができるか)等に関連する設問が無いように見受けられた。ここに挙げた項目に関連する設問が適切に含まれていれば、筆者の点数はずっと低くなったはずである。

少なくともこういう番組を行う前には、複数の被験者を使って、その人の主観的・客観的人間関係力との有意な相関が出るか確認してから行わなければならない。そのような事前検証を行っていたとはとても思えない。『あるある大辞典』の捏造問題によって、科学的検証の重要性が見直されているこの時期に放送する内容としてはお粗末な限りだ。2時間以上も無駄な時間をすごす選択をした自分が許せない。テレビがイイカゲンなモノだってことは、重々承知していたはずなのに。