人の顔のように見える地形

火星の人面岩

1976年、JPL(ジェット推進研究所)バイキング1号(Viking 1)が撮影した火星の表面に人の顔の形に見える地形があることを発表した。この写真は火星上空高度1873kmから撮影されたものであり、人面岩は、火星の北緯40.9度、西経9.45度に位置し、縦約2.6km、幅2.3kmという巨大な岩石である。

当時、この人面岩は古代火星人の遺跡や地球人の先史文明が火星に建築した人工物ではないかとされ話題になった。人面岩の周辺には都市や広場、ピラミッド等の火星の古代遺跡と見られる構造物も確認できるとの主張もなされた。また、コンピュータによる画像処理により、人面岩の口には歯が生えており、目の部分には瞳があり、涙が流れているとの解析結果も報告された。これだけ精巧に作られた岩石が自然に出来るはずが無く、人工物である可能性が極めて高いとの主張がなされたのである。また、バイキングに続いて火星の調査を行う予定だったロシアのフォボス2号が火星到着前に消息を絶ったのも異星人による妨害工作であるとされた。

こうした馬鹿げた主張が完膚無きまでに覆されたのが、2001年マーズ・グローバル・サーベイヤー(Mars Global Surveyor)によって撮影された火星人面岩の高解像度写真である。この写真を見れば一目瞭然のように、人面岩と見えたものは、単なる不定形の岩石の組み合わせに過ぎないことが誰の目にも明らかとなった。あくまで自然の造形と光の組み合わせが生み出したイタズラだったのである。なお、まだ異星人説をあきらめきれない人々は、NASAが異星人の存在を隠蔽するため破壊工作を行った上で撮影したと主張しているようだが、ここで隠蔽するなら最初からプレスリリースなんて出したりはしない。

基本的には自然の造形のイタズラということで説明がつくが、人間の目は三角形に配置されたものを目、口として認識する特性があり、これをシミュラクラ現象類像現象と呼ぶ。シミュラクラ現象により、無意味な図形も人の顔と見えてしまうわけで、人面岩だけではなく、心霊写真や一時期話題になった人面魚、人面犬などの原因とされているシミュラクラ現象に関しては、宇宙人おう答せよ!に豊富な写真とともに紹介されているので参照願いたい。最近のデジカメに搭載されている顔認識エンジンがあらぬ所に顔を検出するのも原理的には同じ事だ(@nifty:デイリーポータルZ:デジカメの顔認識機能で顔探し)。

火星のニコちゃんマーク他

上記の人面岩ほどは有名ではないが、火星には他にも顔に見える地形があることが知られている。

このニコちゃんマーク(Smiley face)は1999年Mars Global Surveyorによって撮影された。直径215kmという巨大なクレータであり、Happy Face Craterと呼称されている。このクレータは人面岩と同様に1970年のバイキングによっても撮影されているが、こちらに関してはなぜか人工物説を唱えるような人は現れなかったようだ。人類への平和のメッセージとか誰かが言い出しても良さそうなものだが、ビリーバーの中にも超えられない一線というものがあると言うことだろうか。もうちょっとその線を論理的・科学的・常識的な方向にシフトしたほうが良いと思うのだが。

火星上には他にも多くの不思議な地形が確認されている。

ちなみにGoogle Marsにおいて、"face"で検索すると、火星の人面岩やニコちゃんマークを見つけることが出来る。

地球上の人や顔に見える地形

また、火星まで行かずとも、地球上にも人や顔に見える地形は存在する。Googleマップによって、そのような地形を簡単に見ることができるので、以下に代表的な例を紹介しておく。

自然は思ったより絵の才能があるようだ。