本当は安い幻の銘酒

LM-72007-05-07


誰しも越乃寒梅という幻の日本酒を代表する銘を聞いたことがあるだろう。幻だけあって1本12,000円といった非常に高額で取引されることもあるという。ところが、メーカーの正規価格を調べてみると、これが思いの外安いことに気づく。次の表は正規価格とプレミア価格に基づき、代表的な銘柄とその現時点での正規価格、さらに正規価格で販売している販売店を見つけた順に記載した表である*1。幻の日本酒の相場は1800mlで2〜3,000円と言ったところで、高価というイメージは格段に薄くなる

蔵名銘柄容量正規価格悪質な価格例正規価格売店
雪中梅本醸造1800ml\2,415\12,000増井酒店かじや酒の新茶屋酒のたかた花屋酒店
越乃寒梅特撰1800ml\3,350\12,000酒泉洞堀一酒のたかた花屋酒店新し屋酒店
別選1800ml\2,540\10,000
白ラベル1800ml\2,030\9,000
久保田萬寿1800ml\8,169\13,000醸造元の朝日酒造は通信販売を認めていない。久保田会に参加している酒屋なら安く入手できるので、醸造元に問い合わせると良い。
碧寿1800ml\5,071\10,000
紅寿1800ml\3,339\8,000
千寿1800ml\2,446\5,000
〆張鶴吟選1800ml\3,549\5,500熊倉酒店仲沢酒店タカハシヤ
1800ml\3,024\5,500
1800ml\2,321\4,500
八海山純米吟醸1800ml\3,775\8,000酒泉洞堀一仲沢酒店地酒と米のときわ酒の新茶屋酒のたかたタカハシヤ花屋酒店新し屋酒店
吟醸酒1800ml\3,469\7,000
本醸造1800ml\2,447\6,000
普通1800ml\2,039\5,500

インターネットが普及する前は、このような価格でこれらの酒を入手できる人は、地元の人など極めて限られた人々に過ぎなかった。それ以外の人は、ブローカーを通して不当に高い価格で購入するしかなかったのである。それが今はインターネットを介した通信販売を利用することで、全国どこでも適正な価格で幻の酒を購入することが出来るのである。これも流通量が極めて限られた商品を、全国に流通させることを可能とするロングテールの一種だと言えるだろう。

一方で、悪質な価格で販売するサイトが後を絶たず、そのような店で購入する人が未だ多く存在する事には多少の驚きを禁じ得ない。これだけ検索エンジンが普及しても、騙される人がまだまだ多いということか。たとえば「越乃寒梅」でGoogle検索する時に表示されるスポンサーリンクに表示される某サイトでは、越乃寒梅や久保田を定価の1.5倍ぐらいで販売しているようだ。広告につられて正規価格を調べることをせず購入する人も多いのだろう。せっかくインターネットという便利なツールがあるのに、使いこなせていないようだ(あるいは多少の価格差は気にならない金持ちか)。

筆者は酒を一切飲まないので、幻の日本酒が安く手に入ったところで直接にはうれしくはないのだが、こうしたお酒を年配の方に贈ると非常に喜ばれる場合が多く、たいへん重宝している。実際は安いんですよとインターネットの利点を語るもよし、高いと思わせておいて恩を売るのもよし、なかなかコストパフォーマンスの良い贈答品である。今年のお中元は幻の銘酒などはいかがだろうか。少なくともいい話のネタになることは間違いない。

*1:ここに挙げた販売店はあくまで一例であり、探せばもっとある。あくまで2007年05月07日時点の販売価格だけで抽出しているため、それ以外の属性については考慮していない。万が一リンク先の販売店で何らかのトラブルに巻き込まれたとしても、筆者は一切関知しない。