本当は安い幻の銘酒
誰しも越乃寒梅という幻の日本酒を代表する銘を聞いたことがあるだろう。幻だけあって1本12,000円といった非常に高額で取引されることもあるという。ところが、メーカーの正規価格を調べてみると、これが思いの外安いことに気づく。次の表は正規価格とプレミア価格に基づき、代表的な銘柄とその現時点での正規価格、さらに正規価格で販売している販売店を見つけた順に記載した表である*1。幻の日本酒の相場は1800mlで2〜3,000円と言ったところで、高価というイメージは格段に薄くなる。
蔵名 | 銘柄 | 容量 | 正規価格 | 悪質な価格例 | 正規価格販売店例 |
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雪中梅 | 本醸造 | 1800ml | \2,415 | 増井酒店、かじや、酒の新茶屋、酒のたかた、花屋酒店 | |
越乃寒梅 | 特撰 | 1800ml | \3,350 | 酒泉洞堀一、酒のたかた、花屋酒店、新し屋酒店 | |
別選 | 1800ml | \2,540 | |||
白ラベル | 1800ml | \2,030 | |||
久保田 | 萬寿 | 1800ml | \8,169 | 醸造元の朝日酒造は通信販売を認めていない。久保田会に参加している酒屋なら安く入手できるので、醸造元に問い合わせると良い。 | |
碧寿 | 1800ml | \5,071 | |||
紅寿 | 1800ml | \3,339 | |||
千寿 | 1800ml | \2,446 | |||
〆張鶴 | 吟選 | 1800ml | \3,549 | 熊倉酒店、仲沢酒店、タカハシヤ | |
純 | 1800ml | \3,024 | |||
雪 | 1800ml | \2,321 | |||
八海山 | 純米吟醸 | 1800ml | \3,775 | 酒泉洞堀一、仲沢酒店、地酒と米のときわ、酒の新茶屋、酒のたかた、タカハシヤ、花屋酒店、新し屋酒店 | |
吟醸酒 | 1800ml | \3,469 | |||
本醸造 | 1800ml | \2,447 | |||
普通 | 1800ml | \2,039 |
インターネットが普及する前は、このような価格でこれらの酒を入手できる人は、地元の人など極めて限られた人々に過ぎなかった。それ以外の人は、ブローカーを通して不当に高い価格で購入するしかなかったのである。それが今はインターネットを介した通信販売を利用することで、全国どこでも適正な価格で幻の酒を購入することが出来るのである。これも流通量が極めて限られた商品を、全国に流通させることを可能とするロングテールの一種だと言えるだろう。
一方で、悪質な価格で販売するサイトが後を絶たず、そのような店で購入する人が未だ多く存在する事には多少の驚きを禁じ得ない。これだけ検索エンジンが普及しても、騙される人がまだまだ多いということか。たとえば「越乃寒梅」でGoogle検索する時に表示されるスポンサーリンクに表示される某サイトでは、越乃寒梅や久保田を定価の1.5倍ぐらいで販売しているようだ。広告につられて正規価格を調べることをせず購入する人も多いのだろう。せっかくインターネットという便利なツールがあるのに、使いこなせていないようだ(あるいは多少の価格差は気にならない金持ちか)。
筆者は酒を一切飲まないので、幻の日本酒が安く手に入ったところで直接にはうれしくはないのだが、こうしたお酒を年配の方に贈ると非常に喜ばれる場合が多く、たいへん重宝している。実際は安いんですよとインターネットの利点を語るもよし、高いと思わせておいて恩を売るのもよし、なかなかコストパフォーマンスの良い贈答品である。今年のお中元は幻の銘酒などはいかがだろうか。少なくともいい話のネタになることは間違いない。