米軍が開発中のプラズマシールド
NewScientistが"Plasma shield may stun and disorientate enemies"として報じた所によれば、米陸軍は数年内に空中でまぶしい光を放ち爆発する防護スクリーンを生成するプラズマシールドを配備する意向だという。
この一見SFのような新兵器はdynamic pulse detonation (DPD)として知られ、短期間だが極めて強い第一のレーザーパルスがプラズマ球を生成、第二のレーザーパルスがプラズマ内に超音波の衝撃波を生成し、明るい光と大音響を生み出す。Plasma Acoustic Shield System (PASS)は最終的にDPDレーザーに警告用の大出力スピーカーと高輝度の光源を統合されて構築される見込みであり、システムメーカーであるStellar Photonics社によってすでにデモが披露されていると言う。
これらの説明を見る限り、PASSは眩しい光と大音響を生成する一種のスタングレネードであり、プラズマシールドという名前から連想されるような、敵の砲弾から身を守るようなプラズマバリアのような兵器とは異なるようだ。簡単に言えば、単にプラズマを利用したと言うだけの、大出力のスタングレネードである。無防備な敵を怯ませるための目くらましにすぎない。
PASSレーザーの最大射程は100m程度であり、十分な出力が得られないことから殺傷兵器として利用することは困難だという。他の高出力レーザー兵器とは異なり、DPDはエネルギーを衝撃波として利用することから、PASSレーザーを使って、1枚の紙を焼くだけでも数分はかかるという。現時点では敵を無力化する非殺傷兵器としても不十分で、PASSによって怯んでいる間に他の手段で無力化しなければならないようだ。
Stellar Photonics社はPASSの小型化、大出力化を進め、歩兵が持ち歩き設定を変えることで殺傷兵器としても非殺傷兵器としても利用できる携帯型レーザー兵器とする予定であり、270万ドルの予算を得ている。
PASSの他にもStellar Photonics社は殺傷兵器としても利用可能な携帯型レーザーライフルを米陸軍に売り込んでいるという。このレーザーライフルはおよそ15kgの重さで、1マイル以上の射程を有し、照準の正確性、移動対象へ光速で命中する能力など既存のライフルにはない数々の利点を有する。このライフルは非殺傷兵器としても利用可能であり、警告後に殺傷兵器モードへ切り替えることもできるようだ。米ボーイング社のAirborne Laser (ABL) のような巨大な化学レーザーを利用する高出力レーザーシステムとは異なり、有毒化学物質や腐食性化学物質の利用を必要とせず、電気さえ供給できれば利用できるという利点もある。もっとも、戦場で必要となる電力の供給を受けることが出来るかという点が運用上の大きな問題になることは間違いない。
PASSレーザーは2008年に試験が行われ、2009年には車両に搭載したPASS砲塔のプロトタイプが試験される予定である。現在は、飛行場や会議室などでノートPCに電力を供給するコンセントを探して回る人を見かけるが、将来には、戦場でレーザーライフルのためのコンセントを探し回る兵士を見かけるようになるかも知れない。その際、各国軍隊でコンセントの形状に違いがあれば相互運用性を大きく阻害することになるので、電源供給システム(コンセント)はある程度標準化されることになるだろう。是非USBの後継規格を採用して、流しそうめん機からレーザーライフルまでありとあらゆるモノに電力を供給するとしてUSBをアピールしてもらいたいモノだ。