インタビューを成功させる三原則

最近、『ネットで人生、変わりましたか?』という本を出版したIT戦士こと、岡田有花女史。新人時代の2003年に発表した線メリ記事が彼女を一躍有名にした。

2004年には悪ノリしたイーレッツにより、彼女をモデルにしたフィギュアを搭載した戦場のメリークリスマスIVが製造されたが(参考記事)、大量の不良在庫を産むこととなった。そんなわけで、毎年自虐的な記事を書く人ぐらいの印象しかなかったのだが、IT戦士 岡田有花リンク集によれば、ITmediaにおいて数多くの記事を担当しており、名実ともにITmediaを代表する記者に成長していることが伺える。

IDEA*IDEAに掲載された岡田有花さんに学んだインタビュー術というエントリは、筆者の彼女に対する見方を一変させた。これによると彼女は極めて上手くインタビューが行える才能を持った人らしい。詳しくはリンク先を確認してもらいたいが、インタビュー前にインタビュー相手に対する基本的な調査を行い、「よく聞かれる質問」をせずにその先から入るのは基本的なことだが疎かにされる場合が多い。インタビューのまとめ方にしても、しゃべった順に時系列に書くのではなく、読者の興味を引き、かつ要点が上手く伝わるように構成する工夫を行っているようで、かなり考えられている事がよく分かる。単に毎年クリスマスに自虐ネタを書くだけの人じゃなかったのだ(失礼)。 

インターネット時代におけるインタビューのやり方に関しては、日垣隆が『知的ストレッチ入門―すいすい読める書けるアイデアが出る』で次のように論じている。

話は変わりますが、インタビューやアンケートの要諦を考えてみましょう。

これらの知的活動において何よりも重要なのは「質問をどう作るか」です。これに総てがかかっていると言っていい。質問を作るのは、仮説を構築する作業ですから、ここでコケたら何百人に会っても、何万という回答を入手しても「ご苦労さん」という話でしかありません。質問の方が100%大切で、回答は仮説の裏付け作業に過ぎないと思った方がいいでしょう。

(中略)

一昔前なら、データベースも閉ざされており、情報が公開されていなかったので、情報を引き出すために、当事者にあって話を聞く必要性はありました。けれども、今はほとんどの情報はオープンになっています。インタビューをする人が知らないというだけでなされる質問は、もはや重要ではなくなっています。事前に調べてきてください、という話です。

(中略)

インタビューにおいて意味のある質問というのは、例えば、事前に集めたデータをもとに「こういう仮説を立ててあなたの説を検証してみたところ、あなたの発言には、これこれの矛盾があるのではないですか」というような質問です。相手が言葉に詰まったり、一日悩んでくれたら、しめたものです。

IDEA*IDEAでは岡田有花女史が「毎日書くの大変ですよね?」とか「百式ってガンダムですよね?」とかいったよく聞かれる質問をせずに、「百式の名前の由来については○○のインタビューで答えていましたが・・・」と始め、彼女がきちんと調べてきていることに気づかされ、身が引き締まる思いがしたとしている。インタビュー前にきちんとオープンな情報を調べて、それを前提にインタビューをした方が、時間の節約にもなるし、よりよい情報をインタビューで引き出すことが出来るのは自明の理だ。

そして、日垣氏は「サイエンス・サイトーク」というラジオ番組で次のような準備をしてインタビューに臨んでいるという。

ゲストによっては本を1冊しか書いていない人もあれば、30冊以上書いている人もいます。どんなゲストの場合でも、私はそれらの本を自腹で買って、総て読んでから収録を迎えます。平均20冊として、なんのためにそれらを読むかというと、理由は3つあります。第1には礼儀として、第2には質問を準備するため、第3には相手の思考回路を把握するため、です

(中略)

事前に著者の本を読みながら、浮かんだ質問を全部書き出す、という作業をしておくのです。質問を何百と用意してあれば安心できます。短時間で総ての著書に目を通すことで、1時間や2時間はもつだけの材料は確保しておくわけです。

(中略) 

さて、20冊くらいを3時間で一気に目を通すと、相手の思考回路に馴染んできます。

私はいつも、相手の思考回路を乱さないように質問をしたい、できればなるべく雑談に近い形でインタビューしたいと思っているので、相手がおおよそどんな思考パターンをするかをつかんでおくことは欠かせません。

それはつまり、その人が物事をどうやって納得したのか、を知っておくことということです。自分の納得の仕方しか知らないと、相手との会話はスムーズに成立しません。納得したのは自分ではなく相手なのですから、相手の納得の仕方に沿って話を進めなければならないということです。

(中略) 

相手の思考回路をなぞることができるようになれば、相手のバックボーンがどうなっていて、どういう因果関係でものを言っているのかが、よくわかるようになります。そうすると、どこを突き抜ければ相手と通じ合えるのかも見えてきます。

インタビュー前にインタビュー相手の著書に総て目を通し、質問を何百と用意、相手の思考回路を把握し、相手の発言がどのような意図で行われているか理解しやすい状況を作る。こんな準備をしてインタビューに臨んでいる人がどれだけいるのだろうか。もっとも、ここに挙げたのはあくまで日垣氏の手法であり、人によっては過剰であったり、逆に足りなかったりすることもあるだろう。しかし、やり方はどうあれ、1)礼儀として相手の基本的な背景を抑えておく、2)過去の発言内容や著書から、質問すべき内容を予め準備しておく、3)相手の思考回路を把握しておき、スムーズにインタビューが進むようにするという3点は両者に共通する、良いインタビューをするのに必要不可欠なエッセンスであるようだ。

インタビューにおいては、相手から必要な情報を上手く引き出し、それを過不足無くまとめることに目が向きがちだが、実際にはインタビューを行う前にどれだけの準備をしたかによって、インタビューの成否の大半が決まっている。開票が始まった時点で既に出口調査によって当落が決まっているようなもので、事前準備が大きなウェイトを占める。インタビューをするようなことがあれば、これらのことに心掛け、インタビューを受ける側から、「あの人のインタビューはすごい」と思われるようなインタビューをやりたいものだ。