フルHDになっても動画解像度に改善がない液晶テレビ
前日のエントリでも取り上げたように、松下電器は「フルHDビッグバン」として全てフルHDパネルを採用したプラズマ/液晶テレビ「VIERAシリーズ」7モデルを発表し、同社では初となるフルHD採用37インチ液晶テレビTH-37LZ75を発表した。
2007年1月29日付エントリ「液晶を捨てられない松下の苦悩」において、非フルHD液晶パネルで120Hz駆動を実現した松下のLX75シリーズを取り上げた。LX75シリーズは全方位に対応した中間フレーム生成に基づく120Hz倍速駆動方式により、60フレーム表示の同社製品(LX50シリーズ)の動画解像度約300本に対し、LX75シリーズでは600本以上を実現している。
そこでは次のような考察を行った。
ところが、LX75シリーズは非フルHDパネルであるので、仮にフルHDで120Hz倍速駆動方式を採用したとすると動画解像度は750本を越える可能性がある*1。これは松下の非フルHDプラズマテレビPX600シリーズの動画解像度720本を超える数値となる*2。まさかプラズマよりも動画性能の良い液晶テレビを自社から出すわけにもいかない松下は今後どうするつもりなのだろうか。
液晶を捨てられない松下の苦悩 - A Successful Failure
日立の解説資料にもあるように、非HDからフルHDに変えれば通常動画解像度は改善されるはずである。ところが、今回発表されたフルHDテレビは動画解像度600本以上と従来の非フルHDテレビと動画解像度に改善が見られなかった。
これは一体どういうことだろうか。旧機種・新機種ともに120Hz倍速駆動方式を採用しており、画面は1秒間に120回書き換えられる。違いは解像度だけで、旧機種は1,366×768の非フルHD、新機種は1,920×1,080のフルHDだ。
動画解像度は専用のパタンが画面の端から端までを5秒で横切る速さでスクロールしたときのパタンが判別可能な限界を解像度に置き換えて表したもので、上限値はパネルの解像度となる。すなわち上限値に対する割合を考えると、旧機種は600/1,360で新機種は600/1,920となる。なんと横方向の動画解像度は実解像度の1/3しかない。旧機種では1/2確保していたにも関わらずだ。
右グラフは、松下と同じ株式会社IPSアルファテクノロジ製のパネルを利用している、日立のフルHDパネル搭載機L37-XR01と非フルHDパネル搭載機L32-HR01の動画解像度を比較したもので、HITACHI解説ページからの引用である。これによるとフルHD(紫線)と非フルHD(青線)で動画解像度にほとんど差が見られないことが分かる*1。
これは少なくとも日立・松下のフルHD液晶テレビは、増加した解像度の力を引き出せていないということを意味する*2。せっかく解像度が増加したのに、動画表示においてはそれを使っていないにも等しい(動画解像度が同じなのだから当然である)。ますますもって、昨年松下が主張したように、フルHDに意味は無いようだ。
当の松下が発売した最新のフルHD液晶テレビからも、フルHDに意味がないことがスペック上明らかになったわけだ。現場ではなんと言って売るのだろう? デジカメ写真がきれいに見られますよとでもアピールするのだろうか。