中学で必修化するより大ヒット漫画を

朝日新聞が『女子も武道、男子もダンス 中学で「必修」に 中教審』として伝えたところによれば、中央教育審議会は中学の保健体育で武道とダンスを男女ともに必修とする案をまとめた。

改正教育基本法で「伝統と文化を尊重」するとの方針が打ち出されたことを受けてのもので、武道としては柔道、剣道、相撲、なぎなた、空手、弓道少林寺拳法合気道などが挙げられ、ダンスとしては、創作ダンス、フォークダンス、現代的なリズムのダンス、競技ダンス、ヒップホップなどが考えられるという。

現行の学習指導要領を見てみると次のように規定されている。

(1) 内容の各領域については,次のとおり取り扱うものとする。
ア 第1学年においては,「A体つくり運動」から「E球技」まで及び「H体育に関する知識」については,すべての生徒に履修させること。「F武道」及び「Gダンス」については,これらのうちから一を選択して履修できるようにすること。
イ 第2学年及び第3学年においては,「A体つくり運動」及び「H体育に関する知識」については,すべての生徒に履修させること。「B器械運動」から「D水泳」までについてはこれらのうちから一又は二を,「E球技」から「Gダンス」までについてはこれらのうちから二をそれぞれ選択して履修できるようにすること。

少なくとも武道かダンスについては現行でも必修ということになるが、筆者はいかなる武道も体育で学んだ覚えはない。実をいえば、高校でも日本史のみの履修で世界史を履修した覚えがないので、高卒資格剥奪で実は中卒?なんて思っていたのだが、中学で武道やダンスを学んだことが無ければ小卒なんてこともあり得るのである。武道の授業がなかったのは確かだから、なんかの余興であったフォークダンスが単位として数えられているのだろうか? もっとも筆者の学んだ当時と現行の学習指導要領の規定が異なっている可能性もあるわけだが。

武道の必須化は時代の流れに逆行した時代錯誤な施策であるような印象がある。実際、満足に教えられる教師もいなければ、設備も道具もない中学校も多いことだろう。そのような環境で付け焼き刃的に武道に触れたところで、果たして伝統と文化の尊重に結びつくのか、武道を嗜む競技人口の増加に繋がるのかはなはだ疑問だ。

環境が整っていない中で無理に必修化するよりもジャンプなどの週刊誌で武道を題材とした連載をさせる方がよっぽど役に立ちそうだ。キャプテン翼がサッカー人口を、スラムダンクがバスケット人口を、ヒカルの碁が碁人口を増やしたのは間違いない。政府が奨励金を出すなどして、武道を題材とするアニメや漫画を増やす方がよっぽど有効だと思う。

ローゼン閣下ならできると思うのだけど。