新たなインタフェースの提案を

ケータイWatchによれば、Apple日本法人はワールドワイドにそろえる形で、iPhone/iPod touch等のタッチパネルで利用されているこれまでにない操作方法に関して、呼称の統一を図っていくことを表明した。具体例として明らかにされたのは次の操作だ。

タップ 指で軽く叩く操作。マウスのクリックに相当
ダブルタップ 2回叩く操作。ダブルクリックに相当
ドラッグ 写真を移動する時に指をずらす操作
フリック リストをスクロールする時に指で軽くはらう操作
ピンチ 2本指でのつまむ操作の総称
ピンチアウト/ピンチオープン 2本指の間を広げて拡大する時の操作
ピンチイン/ピンチクローズ 2本指の間を縮めて縮小する時の操作

タップ、ドラッグぐらいまではなじみがあるが、フリック、ピンチと来るととまどってしまう。フリックはFlickrにより日本における知名度が上がりつつあるが、ピンチ(pinch)は窮地という意味で使われることが支配的で、つまむことを示す用法はあまり知られていない。a pinch of saltでひとつまみの塩というイディオムになるので、きちんと勉強している学生は知っているかもしれない。

ただし、今回上げられた操作自体はタッチパネルの操作としてはずいぶん前から提案されていたもので、AppleiPhoneで発明したわけではない。タップ、ダブルタップ、ドラッグはマウス操作と変わらないし、フリックはマウスジェスチャと考えることができる。ピンチ関係は2本の指を使うためマウスに同様の操作はないが、複数のマウスや指を使うインタフェースの提案も多くなされている。画像の拡縮や回転に2点指定を利用するのは典型的な使い方だ。

それでもモバイルデバイスにおけるタッチパネルの操作を一般的なレベルまで引き上げたAppleの功績は決して小さくない。タッチパネルを利用したデバイスは以前から存在したが、iPhoneほどしっかりと考えてUIを作り込んだメジャーな商用デバイスは今まで存在しなかった。この功績を考えれば、これらの操作の命名Appleが行うのは妥当と言えるだろう。

サービスがどんどんネットの向こう側に移動すると、端末側に残る機能はそれほど多くなく、究極的にはインタフェースだけが残ることになる。処理は鞄の中の本体やネット上のサーバが行い、結果を端末に返すのだ。こうした考えに立つと、携帯電話やPDAなどのモバイルデバイスを販売しているメーカーは、インタフェースに関する技術、知的財産権をどれだけ蓄積するかが今後の商品開発をしていく上で重要になってくると言える。日本メーカーが得意とするような小型化技術、組み込み技術は相対的にその価値を落としていくことになるだろう。

今現在、インタフェースに関して最も先進的な企業の1つがAppleであることは間違いない。そして、インタフェースに関する新たな提案を外国企業に先んじられていては、日本の端末メーカーに未来はない。ことは単なる呼称問題には留まらないのだ。たとえば、iPhoneのタッチパネルはシャープが納入している。シャープはiPhoneのキーデバイスを握っているにもかかわらず、Appleのような提案をすることはできていない。ここに国内メーカーの限界を感じる。

最近ではソニーRollyで一風変わったインタフェースを提案しているが、そうした提案がもっと国内メーカーから出てこないといけない。各メーカーの奮起に期待したい。