Computer Science

融けるような視点移動効果を実現する三次元再構築手法 Ambient Point Clouds

いよいよ今年もSIGGRAPHが始まる時期となった。本エントリでは、ダルムシュタット工科大学 (TUD) とマイクロソフトの合同チームによる、"Ambient Point Clouds for View Interpolation"と題されたtechnical paperから魔法のような視点補間技術を紹介したい。…

水滴が作り出す多層2.5次元ディスプレイ

今年もSIGGRAPHの開催時期となった。この先、いくつか紹介したいと思うが、まず一番目は水滴をボクセル(voxel)として利用した多層2.5次元ディスプレイについてとりあげたい*1。例によって本エントリで用いる図表は論文からの引用である。 (a)動画(b)テキスト…

コンピュータ将棋の現状:三人寄れば文殊の知恵は正しいか?

4月2日に情報処理学会が日本将棋連盟に「コンピュータ将棋」で挑戦状を送ったことが話題になった*1。日本将棋連盟は挑戦を受諾、女流棋界の第一人者、清水市代女流王将・女流王位が対戦相手と決まった。対戦は今秋から順次行われるという。 情報処理学会の挑…

本物と見違えるような画像補間を実現するパスフレームワーク手法

SIGGRAPH2009で発表された"Moving Gradients: A Path-Based Method for Plausible Image Interpolation"という論文*1では、2枚の連続する入力画像を与えると、その間のフレームを極めて自然に補間生成する新たな手法を提案している。 図1 図1は両端の入力画…

Photoshopを凌駕するリアルタイムの動画像切り貼り処理

Photoshop等の画像編集アプリケーションを用いた画像処理において、パッチツールを用いた画像の切り貼りは重要な操作である。パッチツールを用いた切り貼り操作では、貼り付けたパッチ画像は周囲にあわせて自動的に調整され、境界面が目立たないようになる。…

都市景観をスキャンし3Dモデル構築する予想外の方法とは?

建物群から構成される都市景観の3Dモデリングは、様々なアプリケーションにおいて利用されているが、その利用は現時点では限定されており、より積極的な利用を促進するには、3Dモデル構築の省力化、自動化、低コスト化が求められる。最近、ジョージア工科大…

Web上の膨大な写真からローマを1日で構築する方法

前回、『写真に基づく3D空間構築手法の到達点』としてバラバラの写真から3D空間を構築する手法について取り上げた。コメントで言及された人もおられたが、MicrosoftはPhotosynthとして、同様にStructure-from-Motion (SfM)を用いて写真をつなぎ合わせ、イン…

写真に基づく3D空間構築手法の到達点

一昔前は実世界の建築物を元にウォークスルー可能な3D空間を構築しようと思ったら、まず各部屋の形状を計測器を用いて計測し、その計測結果に基づいて人手でモデル化し、領域ごとにテクスチャを貼り、照明を設定して……と気の遠くなるような作業が必要だった…

幽体離脱アバタ操作型実世界環境の作り方

我々の自我は身体のどこに存在するのか? 我々は目という窓を通して実世界を眺めている感覚を有しており、すなわち、自我が目の奥に存在すると感じている。ところが、稀に自我が自分の身体から浮遊して別の位置にあるように感じられる場合がある。『心の脳科…

小学生が学ぶビジュアル言語ビスケットがすごい

情報処理10月号では、『特集 未来のコンピュータ好きを育てる』としてコンピュータに魅力を感じる人材を育成する試みを紹介している。とても面白い特集となっているので、送付されてきたまま袋から出さずに放置してある人は是非一読する事を薦めたい。小中学…

Adobe Photoshop CS5に実装されるPatchMatchの実力

動画:Adobe Photoshop CS5の新機能はもはやえげつないレベル… | ◆めっつぉ:スクエニ&ガジェットニュースとしてAdobe Photoshop CS5の新機能が紹介され話題になっている。 概要を知るには動画で見るのが手っ取り早いが、本エントリではSIGGRAPH2009で発表さ…

1/1000の圧縮率を目指す次世代動画像圧縮技術の行方

現在最高の圧縮効率を誇るAVC/H.264は1GbpsのフルHDTVを10Mbps以下に圧縮できる。1/100以上の圧縮率ということになるが、次世代beyond HDTVの8k4kの空間解像度、60〜300fpsの時間解像度、マルチスペクトルの色表現、10〜16bit/pelの画素値深度、複数視点を考…

Web上の膨大な画像に基づく自動画像補完技術の威力

画像内に映り込んだ所望のオブジェクトを排除し、違和感の無い画像を生成するシーン補完技術に関しては近年複数の研究成果が発表されている。しかし中でも2007年のSIGGRAPHにて米カーネギメロン大のJames HaysとAlexei A. Efrosが発表した手法*1はブレークス…

顔画像処理技術の研究動向と応用事例

情報処理に2ヶ月連続で顔画像処理技術のサーベイが掲載されている*1,*2。サーベイ著者らの研究業績紹介にやや偏っている印象があるが、興味深く、有用なサーベイとなっているのでポイントだけ整理してまとめておく。なお、最近話題になったモノを中心に元論…

ニコニコ大会議が浮き彫りにしたニコニコ動画の実世界拡張における課題

7月4日に開催されたニコニコ大会議2008 〜日本の夏、ニコニコの夏〜は大盛況だったようだが、ここではリアルタイムで1万人のユーザに対して動画が配信され、普段のニコニコ動画と同じように誰もがコメントを入れられるようになっていた。そこで、実世界への…

ウェアラブルディスプレイの安全性

Engadgetによれば、ワシントン大学の研究チームが、コンタクトレンズ型のディスプレイを開発したという。ワシントン大学のニュースリリース"Contact lenses with circuits, lights a possible platform for superhuman vision"によれば、レンズを開発した電…

透明人間になる方法 〜光学迷彩の可能性〜

1897年 H.G.Wellsが提示した透明人間というアイデアは多くの人の心を魅了し、以後多くの派生ストーリーを生み出してきた。しかし、実際には透明人間の実現は難しい。人は網膜に結像することで外界を見ているが、網膜が透明になると目が見えなくなる。血液を…

新たなインタフェースの提案を

ケータイWatchによれば、Apple日本法人はワールドワイドにそろえる形で、iPhone/iPod touch等のタッチパネルで利用されているこれまでにない操作方法に関して、呼称の統一を図っていくことを表明した。具体例として明らかにされたのは次の操作だ。 タップ 指…

予知インタフェース

Engadget経由でNew Scientist Technology Blogより、ブダペスト工科経済大学の2人の研究者Laszlo LauferとBottyan Nemethによる興味深い研究成果が紹介されている。彼らは皮膚抵抗の変化を計測することで、ビデオゲーム中のユーザがボタンを押す2秒前にそれ…

2000億枚普及したCDは原音の美しさを記録できない

CD(Compact Disc)が2007年8月17日をもって製造開始から25周年を迎えたという。世界初のCDが作られてから現在までに累計2000億枚を超えるCDが販売されてきた。CDはそのランダムアクセス性に代表される使い勝手の良さから圧倒的に支持されてきたが、音質が優れ…

デジタルコンテンツは現代病を誘発する?

高周波成分を切り捨てたデジタルコンテンツ 世の中はデジタルコンテンツで溢れている。音楽の視聴スタイルも近年急速に変化し、CDから取り込んだ音楽をiPodで視聴することが当たり前となった。しかし、ご存じの通りCD音源は44.1kHzでサンプリングされている…

500GBの容量をもつホログラフィックディスク

Ars Technicaが"Microholography milks 500GB out of DVD-sized discs"として報じたところによれば、ベルリン工科大学の光学研究科の研究チームは、DVDサイズのディスクに500GBのデータを蓄積する技術を開発したと発表した。Microholasプロジェクトの研究チ…

16の情報視覚化ツール

16 Awesome Data Visualization Toolsでは、16のすぐれた情報視覚化ツールを紹介している*1。DiggやFlickrなどWeb2.0タイプの新たなコミュニケーションに対する視覚化手法が一覧でき、なかなか興味深いのでまとめておきたい。そもそも、情報視覚化(Informati…

人間を定義するのに必要な記憶容量

一人の人間を定義するのに必要な記憶容量はどのくらいだろうか。Schefferは恒星間飛行を低コストで行うために、人をデータの状態で転送するアイデアを論じた論文の中で、一人の人間の心を記録するのに必要な記憶容量について見積もっている。 Scheffer, Loui…

Google論文に見るマルウェアの傾向と対策

GoogleはWebベースのマルウェアの感染手口に関する論文"The Ghost In The Browser"を発表した*1。 Niels Provos, Dean McNamee, Panayiotis Mavrommatis, Ke Wang and Nagendra Modadugu: "The Ghost In The Browser - Analysis of Web-based Malware" 数十…

身の回りのあらゆる所から電力回収を目指すハーベスタ技術

普段持ち歩く携帯端末の数が増えつつある昨今だが、携帯端末を常時運用するに当たり大きな問題になるのがバッテリである。右のグラフはノートPCのさまざまなファクタに関するここ10年ほどの改善割合をlogスケールで示したものだが、バッテリのエネルギー密度…

PS3の在庫を集めるだけで20PFLOPS!(≒世界最速スパコンBlueGene/Lの60倍)

@ITによれば、独立行政法人理化学研究所は2012年までに10PFLOPSの演算能力を持つスパコンを神戸市ポートアイランドに開発するようだ(次世代スーパーコンピュータ施設の立地地点を神戸に決定 | 独立行政法人 理化学研究所プレスリリース)。TOP500 Supercom…

世界同時株安に見る情報視覚化の威力

27日の中国上海市場の株価急落を受けてニューヨーク市場は大暴落、翌28日東京株式市場は全面安となり、終値は前日比500円以上下落した。中国発の世界同時株安の発端である。過熱気味であった中国バブル崩壊への警戒に加え、米国の景気後退への懸念、そして円…

生きたバクテリアは究極のデータストレージになり得るのか?

生物の設計図を記憶しているDNA(デオキシリボ核酸)は、複写、継承可能な性質を有するため、データストレージとして利用できるのではないかと考えられており、目下注目を集めている研究分野の一つである。HDDの耐久性は先日取り上げたように数年持てば良い…

Googleの結論「S.M.A.R.Tに基づく寿命予測は役に立たず、HDDは突然死する」

Googleは世界でもっとも多くのHDDを利用している企業の一つだが、Googleはこのたび2001年以降同社で利用してきた10万台以上のHDDの故障率を統計解析した結果を発表した。対象となるHDDは80GBから400GB、5400rpmもしくは7200rpmのPATAもしくはSATA HDDである…