自らの無能を声高に喧伝した立正大学

J-CASTが『キャンパス温泉構想の悲劇 1,500m掘っても出なかった』として伝えたところによれば、立正大学はキャンパス内の温泉掘削計画をあきらめたようだ。立正大学はキャンパスの目玉として、キャンパス内に温泉を掘削することを計画、学長をはじめとする地下水研究の専門家がお墨付きを与える形で多額の費用をかけて掘削工事を進めていた。

ところが、1,000メートルも掘ればどこでも温泉が出るはずだったのに、大深度に当たる1,500メートルも掘削しても一向に温泉が出ない。最近では、垂直電気探査高密度電気探査電磁探査放射能探査といった事前探査で温泉が出るかどうかはかなりの確率で分かるようになっており、立正大学のように全く温泉が出ないことは極めて珍しいケースのようだ。

財団法人中央温泉研究所と日本温泉協会の関係者たちも「温泉が出ない」ことの可能性の低さを指摘する。1980年後半のバブル経済期以前であれば、温泉掘削は「ばくちのようなもの」と成功率の低さが当然視されていた。しかし、以降は電磁波や超音波、地震波などを使った探査方法が「普通に」広がり「地下水脈があるかないかは掘る前にほぼ分かるようになった」と口をそろえる。統計はない上、失敗例は報告に上がりにくいこともあり、実態ははっきりしない部分もある。しかし感覚的に言えば、温泉掘削は「普通に」事前探査すれば、今では「はずれは少ない」のだそうだ。「はずれ」の中でも比較的多いのは、「温泉」が出るには出たが、水温が低すぎたり、成分が温泉と呼ぶには不十分だったりするケースだ。温泉の湯そのものがほとんど出ないという「はずれ」は、さらに少ないという訳だ。

J-CASTニュースが温泉研究所員に「1,000メートル掘れば温泉は出るという説は本当でしょうか」と質問すると、「場所によります。関東なら東京から埼玉南部にかけては概ね本当と言えます」。キャンパスがある熊谷市は埼玉北部だ。

キャンパス温泉構想の悲劇 1,500m掘っても出なかった : J-CASTニュース

立正大学では日本地下水学会長を務めたことがある「地下水脈」の権威である高村弘毅学長が『良質な温泉がわき出る可能性が高い』と太鼓判を押したこともあり、面目丸つぶれである。

立正大学平成18年度事業報告によれば、温泉掘削工事は次のように記載されている。

(5)温泉掘削工事

  1. 工事請負業者 株式会社 日さく関東支社(埼玉県さいたま市
  2. 請負金額 66,000,000 円
  3. 工事内容 温泉掘削工事 1,500m
  4. 当初工期 平成18 年4 月28 日〜10 月31 日
  5. 追加工事工期 平成18 年10 月14 日〜平成19 年2 月19 日
  6. 追加工事金額 11,235,000 円
  7. 追加工期理由 温泉掘削工事については契約通り1,500mの深度まで掘削が完了した。完了後の諸作業としての清掃および水位回復作業と測定等を実施した後に、温泉試料分析採取を行うべく作業を実施したが、湧出量(揚湯量)が少ない事を踏まえ、更に掘削工事の増堀をするかどうかについて検討した結果、増堀せず掘削工事を予定通り終了することに決定した。最終段階の温泉分析に必要な手当てとして、坑内に蒸留水を投入する等の措置を講じ、温泉試料分析採取などの仕上げ延長を実施するなどの理由により工期を延長した。今後は学内敷地内に「1,500m」もの抗井があることから,学術的な利用を計っていく予定。

ほぼ10ヶ月の工期と77,235,000円もの大金を投じて手に入れたのが使い道があるのか無いのかはっきりしない1,500mもの坑井では無駄使いとの非難は免れないだろう*1。掘削工事を請け負った日さくのWebページには次のような記載がある。

温泉はどこででも湧出するものではありません。このため、温泉開発に当たっては十分な事前調査を行い、温泉湧出の可能性を検討することが必要です。

温泉の掘削には多くの資金が必要です。このため、長期間にわたって地下から温泉を湧出させ利用することが望まれます。井戸の掘削方法や井戸の構造が悪いと温泉の湧出量が減少します。当社では、長年培った経験と技術でこれらの問題を解決し、末永く利用できる温泉井戸を提供いたします。

http://www.nissaku.co.jp/hotspringdevelop/

立正大学関係者にとってこれほどむなしく聞こえるアピールはないだろう。しかし、専門家を多数抱える大学が多くの実績のある掘削業者と協業して、温泉を掘り当てられなかったのが、単純に運の悪さだけに起因するのであれば、お気の毒としか言いようがない。権威が実際には役に立たないというのであれば同情の余地はないが、いずれにせよ勝つはずのギャンブルに負けた同大学が未来へ汚点を残したのは確かなようだ。

*1:あるいは研究上1,500mの坑井がなんとしてもほしい研究者が、カモフラージュに温泉掘削計画をぶち上げ、まんまと坑井を手に入れたという可能性もある