真実は多数決で決めるものではない

沖縄戦の集団自決に関する軍の関与に関する記述が教科書から削除された高校日本史教科書検定に関して、沖縄県で検定撤回を求める沖縄県民大会が開催され議論を呼んでいる。

参加者数に関しては各社とも主催者側発表の11万人と報じたが、後になってこの数字がかなり誇張したものであったことが判明し、朝日新聞と産経新聞が非難合戦を繰り広げていたりする。もっとも産経新聞も当初「撤回求め11万人集会」等と報じており、他紙のことをとやかく言える身分かという感じがする*1

11万人とすると全県民137万人の12人に1人が参加していたことになり、あり得ない数字だ。沖縄県警幹部は4万人強と述べており、さばを読むにもほどがある*2。主催者側としては、こんなに多くの人が抗議していますよとアピールしたいのだろう。マスコミはまんまにそれに乗せられたというわけだ。

政府は沖縄県民大会を受けて、沖縄戦の記述の見直しの検討に入ったが、ちょっと待ってほしい。沖縄戦に関して新たな事実が発見されたとか、そういうことで見直すなら分かるが、なぜ単なる抗議集会で事実が変わるのか。今回の検定で軍関与の記載が削除されたのは何らかの理由があってのことだと思うが、それを覆すだけの根拠があるのだろうか。

沖縄タイムスによれば、今回の検定方針の変更は「最近の学説状況の変化」や大阪地裁で係争中の「集団自決」訴訟での日本軍元戦隊長の証言などが根拠になっているようだ。

 今回の検定意見に至った経緯について文科省は「軍の強制は現代史の通説になっているが、当時の指揮官が民事訴訟で命令を否定する動きがある上、指揮官の直接命令は確認されていないとの学説も多く、断定的表現を避けるようにした」と説明。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200703311300_01.html

筆者も沖縄の集団自決には軍の関与があったのではないかとは思うが、事実の認定には慎重でなくてはならない。少なくとも何万人が集会したから事実認定とかそういうことはあってはならない。事実は多数決で決めるものではないのだ。

見直しにあったっては、客観的な証拠を積み重ね理詰めで真実に迫ってほしい。何万人が望もうと、あるいは嫌おうと、真実は変わらないのだから。

*1:産経の言い分としては、産経は主催者側発表と明記しているが、朝日は明記せず規定事実化のように報じているということだ。正直言って記事が与える印象に違いがあるようには思えない。

*2:産経新聞が報じているように、航空写真を元に1人ずつ数えたところ参加者は1万9000人〜2万人に過ぎないようだ。