雨の中で走ることは本当に価値あることなのか?

LM-72007-10-19


長雨の季節である。思いかけず雨に降られて、傘が無くて往生した経験は誰にでもあるだろう。そんなとき、少しでも雨に濡れないで済むように走る人は多いが、それは本当に意味のあることだろうか。走ると雨に濡れる総時間は確かに短くなるだろうが、単位時間あたりに濡れる量は増える気がする。結局、走ることは得なのか、損なのか。

どんなことでも研究している人はいるもので、こうした素朴な疑問もモデル化されて解析され回答が用意されている。

イタリアのウディン大学のAlessandro De Angelisは人間を直方体とモデル化して解析しているし、テキサス大学のS. A. Sternは正方形の平面を人間のモデルと見なすことで十分としている。この2つのモデルは一定分布、一定強度で降る雨の中を移動する。

S. A. Sternの計算によれば上から当たる雨粒の量は移動速度に関わらず一定であり、移動により前方から当たる雨粒の量は、早く移動すれば移動するほど少なくなると言う。もちろん単位時間あたりの衝突量は増えるが、それよりも時間減少の効果が大きいという訳だ。彼によれば、濡れないための方法は、「前屈みになって前方からの雨に対する表面積を最小にする」ことであり、「寝そべってスケートボードで移動するのが理想的」だと言う。

一方、Alessandro De Angelisも早く移動するほど濡れる量は少ないという結論は同一だったが、短距離走の選手のようなスピードで走っても、早足で歩く場合に比べて10%ほど濡れる量が減る程度であり、この程度の差では走ることは意味はないと結論づけている。

結局、特に急いでいるという事がないのであれば、雨が降ったとしても慌てず騒がず英国紳士のように悠然と移動することが好ましいようだ。もちろん、これから雨脚がきつくなることが予見される場合はこの限りではない。