国産品でも10年前のDVD-Rはそろそろ読めなくなる。

LM-72008-02-10


朝日新聞が"DVDディスク、寿命に格差 数年から「永遠」まで"として伝えたように、現在流通しているDVD光ディスク媒体の寿命はピンキリで数年で劣化して読めなくなるものから、100年ぐらいは持ちそうなものまで様々なようだ。今回調査対象となったメディアの中でも台湾製メディアの劣悪さが目立っており、海外製のメディアを利用してきた人は別のメディアにバックアップし直すなどの対策をした方がよいだろう。

上記の記事は財団法人デジタルコンテンツ協会による高信頼(長寿命・高セキュリティ)光ディスク媒体の活用システムの開発に関するフィージビリティスタディ報告書に基づいており、報告書には詳細が記載されているので、要点を紹介したい。

このフィージビリティスタディでは65℃、75℃、80℃、85℃の4条件で加速劣化寿命推定を行い、アレニウス法を用いて寿命推定を行っている。アレニウス法とは、加速寿命試験の内で湿度条件を最悪条件に設定し、温度を色々と変化させて、加速劣化を起こさせる方法である。次の表はアレニウス法にISO18927を適用した、25℃/80%RHにおける信頼水準95%、生存率95%となる寿命推定結果を示している。

No. 種別 生産国 推定寿命 コメント
A DVD-R 日本 105年
B DVD-R 日本 測定不能 複数の温度条件下において、PIエラーが80以下でPIエラーの許容限界値よりもかなり小さく、寿命推定できる程には劣化が進まなかったため、現時点では寿命推定はできない
C DVD-R 日本 11年
D DVD-R 日本 19年
E DVD-R 台湾 測定不能 加速劣化試験前から許容値を超えるエラーのため寿命推定不可
F DVD-R 台湾 測定不能 加速劣化試験前から許容値を超えるエラーのため寿命推定不可
G DVD-R 台湾 測定不能 加速劣化試験前から許容値を超えるエラーのため寿命推定不可
H DVD-R 台湾 測定不能 加速劣化試験前から許容値を超えるエラーのため寿命推定不可
I DVD-RW 日本 12400年 高温側の寿命が非常に短く温度による寿命への影響が大きいと考えられる為、このような長い推定寿命を持つと判断するにはデータ不足である。
J DVD-RW 日本 45年 すべての試験環境においてばらつきも少なく、もっとも長い許容限界到達時間が得られたが、高温側と低温側での到達時間の差が少ないため、推定寿命は短くなった。
K DVD-RW 日本 28年 高温側で比較的長い到達時間であったが、低温側で短かい結果となった
L DVD-RW 台湾 測定不能 65℃以外の高温側の限界達成時間のばらつきが大きく短いため、寿命推定は精度が低く推定に値しない
M DVD-RW 台湾 測定不能 ほとんどのサンプルが一回目のデータ取りで寿命に達してしまうなど、あまりにも品質が悪く、初期値の大きいばらつきを見ても、推定に値しない
N DVD-RAM 日本 307年
O DVD-RAM 日本 219年
P DVD-RAM 台湾 139年
Q DVD-RAM 台湾 15年
R DVD-RAM 台湾 10年

DVD-Rに関しては、台湾ブランド4社は、初期段階から十分な特性が得られないものや、加速劣化試験において著しい変化を示し、寿命推定に値する品質水準ではないと結論づけている。一方国内ブランド4社は、ブランド間で若干の差があるものの、総じて基準内品質からの緩やかな変化を示しており、国内ブランド品については、数十年〜100年程度の寿命があるとしている。

ただし、今回の寿命推定においてはISO18927に加えてブートストラップ法による推定も行われており、中央値は両手法で比較的一致するが、95%生存寿命はかなり隔たりが大きい。これは、寿命データのばらつきの分布がISO18927で正規分布と仮定しているのに対してブートストラップ法ではこの仮定を設けていないことが影響していると考えられる。

ばらつきが少なくISO18927による場合とブートストラップ法による場合で中央値が一致しているものについて見ると、保存温湿度30℃、80%RHの場合の寿命の中央値を見ると、DVD-Rでは10年以上、DVD-RWでは30年以上、DVD-RAMでは100年以上となっている。保存条件25℃、80%RHの場合は、DVD-Rでは17年以上、 DVD-RWでは50年以上、DVD-RAMでは300年以上となっている。

湿度に関しては特にDVD-Rにおける影響が大きく、60%RHでの推定寿命は80%RHの場合の6倍となっている。DVD-Rでは、30℃、80%RHにおける推定寿命が比較的短くなっているが、保存する湿度を低めにできれば大幅に寿命を長くすることができる。DVD-RWについても同様のことが言える。

以上のことから、DVDにおけるバックアップについては次の原則を導くことができるだろう。

  • メディアは国産品を用いる。ただし最近は海外製の品質も向上してきたので、国内大手ブランドならばそれほど神経質になる必要はないかも知れない。
  • メディアは1.DVD-RAM(100年)、2.DVD-RW(30年)、3.DVD-R(10年)の順で選択する。
  • 保存条件は低温・低湿度が望ましく、特にDVD-Rについては湿度を低く保つ工夫が重要である。

DVD-Rが普及しだしてからまもなく10年が経とうとしている。高品質な国産メディアであっても、そろそろ劣化が許容値を超えてもおかしくない時期だ。必要なデータはDVD-RAMや次世代ディスク、HDDなどにバックアップしておくことをお勧めする。