ペテン師江原啓之の終焉

2008年1月の1ヶ月間で「インチキ 江原啓之」の検索キーワードによる2007年4月15日付エントリ『イカサマ霊能師やインチキ占い師の手口まとめ』アクセスは7,655回に上り、検索エンジンからのアクセスの38.85%を占めた。当該エントリの1月のアクセス数は9,438回であるため、大半が江原啓之のインチキについて能動的に知ろうとした行動であることが分かる。1月は口からの出任せで嘘八百を並べ立てる江原啓之の霊視がイカサマであることがようやく表に出てきた月間であった。

放送倫理・番組向上機構BPO)によるスピリチュアル番組への警告

まず、1月21日には、BPO/放送倫理・番組向上機構(BPO)FNS27時間テレビ「ハッピー筋斗雲」に関する意見として、出演者への配慮を決定的に欠いている。番組の取材や構成、演出は、制作上の倫理に反するとして、フジテレビに改善を求めた。

一般人に本人が望んでいないでたらめなスピリチュアル・カウンセリングを一方的に行い、父親の名前を騙って非難した当該番組の倫理感の欠如には呆れるばかりだが、「放送の公共性とスピリチュアルカウンセラーのショーアップ」という章に霊能師をTVという公共性の高いメディアで扱うことの問題点が指摘されているので引用しておく(強調はLM-7による)。

 サブタイトルに“スピリチュアルサプライズ!”を打ち、江原啓之氏をスピリチュアルカウンセラーと紹介し、「守護霊や亡くなった人の魂と交信し、その声を伝えることができるという」と説明を加える。また、VTR構成の節目節目で、「お父さんの声」、「亡き父のメッセージ」をナレーション・文字テロップでたたみかける。そして、江原氏は終始「お父さんはこう言っている」と言いながら話を進める。

 「ハッピー筋斗雲」の構成・演出はこのように、スピリチュアルカウンセラーのPRの趣で飾られている。しかも、それはカウンセリングを受ける本人の同意を得ないまま行われ、その悩みの誇張・強調までしている。ここに至ると、初めの企画の趣旨「素晴らしい活動をしている人を・・・元気づけ喜ばせる」はもうあってないようなものとなる。現に、だからこそAさんは、「善意の形をとりながら、結果的に傷つけられた」と、BRC(放送と人権等権利に関する委員会)に相談を寄せた。

 民放連の放送基準は、占いや運勢判断、霊視など、科学的根拠に乏しい題材の取り扱いには、慎重な対応を求めている。今回のように、本人が進んでそれを望んでいないケースでは、なおさら霊視などの題材を番組に取り入れることには慎重であるべきである。まして、“おもしろさ”を求めて、スピリチュアルカウンセリングを喧伝するかのような構成・演出は避けられて然るべきである。

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そもそも、日本民間放送連盟の放送基準には、占いや霊など非科学的な事象を扱う際の基準を次のように定めている。

3章 児童および青少年への配慮

(20) 催眠術、心霊術などを取り扱う場合は、児童および青少年に安易な模倣をさせないよう特に注意する。

8章 表現上の配慮

(53) 迷信は肯定的に取り扱わない。
(54) 占い、運勢判断およびこれに類するものは、断定したり、無理に信じさせたりするような取り扱いはしない。

14章 広告の取り扱い

(108) 占い、心霊術、骨相・手相・人相の鑑定その他、迷信を肯定したり科学を否定したりするものは取り扱わない。

先の放送倫理検証委員会による問題点の指摘に対して、フジテレビは言い訳に終始しているが、「放送の公共性とスピリチュアルカウンセラーのショーアップ」に対するフジテレビの回答は次の通りだ(強調はLM-7による)。

回答
○ 「スピリチュアル・カウンセラー」は、江原啓之氏が、肩書きとして名乗っているものであり、江原啓之氏がメディアに登場する際に必ず使用する呼称ですので、今回も使用させていただきました。霊的、精神的な視点からカウンセリングを行うカウンセラーであると認識しております。

「スピリチュアル・サプライズ」というのは、スピリチュアルカウンセラーである江原啓之氏が出演して行われるサプライズ企画である事をわかり易く簡潔に視聴者にお伝えするために、使用しました(2007年11月26日付)

○ カウンセリングは、江原氏が感じ取った、精神的な感覚や考えから発せられるアドバイスだと認識しており、信憑性に関しては、カウンセリングを受けた当事者個人の問題と考え、カウンセリング後に当事者からクレームや問題提起を受けた場合は放送をとりやめる方針をとりました。しかしながら一切のクレームや注文をいただかなかった為、放送に至りました。

江原氏の、所謂「霊視」と言われるものを基にしたコメント部分に関しては、目に見えるものではなく、当事者しか認識し得ない部分ですので、番組としては放送基準を尊重し、断定及び肯定を避けるべく、「〜見つめていたという」「〜救ってくれるという」等、ナレーションを伝聞調にしたり、スーパーテロップの最後に「?」を入れるなど、適宜配慮いたしました。(2007年11月26日付)

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報告書では、この企画の取材・構成・演出は次の点において問題があったと断じている。

  1. スピリチュアルカウンセラー(霊能師)ありきの企画・構成並びにショーアップ
  2. 客観的な裏づけに欠ける出演者の「経営難」の断定と強調

その上で、バラエティ番組が「おもしろさ」を第一とする取材・構成・演出を繰り返し、その結果、人間の尊厳を傷つけかねない番組を放送していると厳しく非難した。具体的には、放送基準が慎重な扱いを求める「スピリチュアルカウンセリング」なるものを、「おもしろく」見せるために、一方的に出演させた人の生活状況を十分な裏づけも取らずに貶めたとした。

TVによる昨今のスピリチュアルブームは霊感商法の被害者の増加という悪影響をもたらしている。J-CASTニュースが伝えたところによれば、全国霊感商法対策弁護士連絡会紀藤正樹弁護士はスピリチュアルブームになった2006年からTV番組のビデオを利用した霊感商法の勧誘が増えていると指摘している。国民生活センターによれば、霊感に訴える「開運商法」は、06年度には全国での相談件数が4年前の倍近い約3000件に達しており、被害金額も約27億円に膨れ上がっているという。TVは詐欺師どもの片棒を担いでいるのだ。BPOの指摘を受けたこうした倫理性を欠く番組が淘汰されることを期待したい。

存命の父親を霊視した江原啓之の大ポカ

イカサマ霊能師やインチキ占い師の手口まとめ』にて、彼らの手口が予め対象者の情報を調査するホットリーディングと、巧みな話術によって当たったと錯覚させるコールドリーディングに大別されることを示した。江原啓之もTVスタッフによる調査が暴露されたことがあったが、今回は致命的なミスをやった。

週刊文集によれば、12月28日放送の「オーラの泉」において、檀れいがこの日ゲスト出演し、江原啓之は彼女の亡くなった父親をいつも通り霊視し、「お父さんは宝塚音楽学校の受験を理解し、見守っていた」などと出任せを並べ立てたが、実は彼女の実父はご存命だったという。

ところが、この放送を見た壇の出身地の人々から疑問の声が噴出したのだ。壇の高校時代の同級生が語る。「彼女が『オーラの泉』に出るというので、楽しみにしていたんですが、江原さんが『死んだ父親』を霊視しているのでびっくりしました。壇さんのお父さんは、元気にこの町で生活していますよ。なぜあのような話になているのか、まったく理解できません」

週刊文春2008年1月24日号 【江原啓之 インチキ霊視!? 檀れいの「死んだ父親」が生きていた!】 pp.34-37

壇はたしかに養父を交通事故で亡くしているが、壇が宝塚音楽学校を受験した時には養父は彼女の母親と出会ってもいない。出会ってもない女性の子供の受験を理解し見守ることがあろうか。また、壇の宝塚音楽学校の受験を知る立場にあった彼女の実父はご存命で、町役場で課長を務めていると言う。明らかに事前の調査ミスである。この詐欺師は一体誰を霊視していたつもりなのだろうか。

詐欺師の凋落

江原啓之放送倫理・番組向上機構BPO)による「人間の尊厳を傷つけかねない」という意見に対し、意見書を重く受け止め、慎重に行動するとしながらも、「フジテレビの番組制作のありかたを遺憾に思います」などと被害者然としてフジテレビを痛烈に批判した。

江原さんの番組の大ファンだとフジから聞かされたため出演を決めたものであって、「望まれていないカウンセリング」とは知らされていなかったと江原さんは主張。さらに、

「テレビ局から虚偽の提案を受けた」「私自身が不覚また迂闊に騙された」

などと、あたかも被害者であるかのように訴えた。そして、

「問題となっているテロップの『経営難』などの発言は私からありませんでした」「ボランティアに関する経済的な苦労に対しての、バランスを指摘したにすぎません」

と弁解した。

江原啓之がフジを痛烈批判 「虚偽の提案でだまされた」 : J-CASTニュース

悪の組織が仲間割れをするのは、組織崩壊への序章であることはお約束の一つだが、スピリチュアルカウンセリングなんて信じてもいないくせに視聴率稼ぎのためにおもしろおかしく取り上げるTV局と、霊能力なんてみじんもないくせに哀れな被害者を寄せ集めるためにTVの影響力を利用した詐欺師の、蜜月は終わりを迎えつつあるようだ。こうした詐欺師がのさばる時代が早く終わることを願う。