ポメラを買う前に知っておくべきこと
テキスト入力専用端末として話題になっているポメラだが、使ってみると様々な問題点に気づく。ポメラはテキスト入力だけというコンセプトに基づき、テキスト入力以外の機能を極力廃したポメラだが、テキスト入力においても困る場面が散見される。こうしたことは購入前に把握し、自分の使い方においてフォロー可能かどうか十分吟味すべきだ。
思ったより重く、分厚い
この辺は個人の主観だが、電子辞書のようなモノを想像していると、その大きさに驚くだろう。鞄の中に入れていると結構かさばる大きさであり、これを持ち歩くのはそれなりに覚悟がいる。ノートPCの代わりにポメラを持ち歩くのなら無問題だが、何も持っていなかった人がポメラを新たに持ち歩く場合には、注意が必要だ。
8,000字制限はそれほど問題にはならない
ポメラは動作が遅くなることを防ぐために1ファイルあたり8,000字という制限を設けている。しかしこの制限が問題になる人は比較的少数だろう。たとえばこのエントリは一般的なblogの中では長文に属すると思うが、3,500文字弱でありポメラの制限内に十分収まる。さすがに先日の巨大エントリ『2001年9月11日、ワールドトレードセンタービルの102分間』は30,000字を越えているがあれだけの量のテキストを1ファイルで書く人は少数派だろう。
かな入力はおまけ
ポメラではローマ字入力に加え、かな入力もサポートされている。しかし、上段の「ぬ、ふ、あ、う、え、お、や、ゆ、よ、わ」は小さいキーサイズに押し込められていて押しにくい。また、電源を切るたびに入力モードがデフォルトのローマ字入力に戻るという仕様は最悪で、毎回入力モードをかなモードに変更しなければならない(2009年1月より提供されたファームウェアバージョンアップによって入力モードが保存されるようになった)。普段かな入力を利用している人は購入を再検討すべきだ。
半角の0(ゼロ)とO(オー)の区別が付かない
ポメラで利用されているフォントにおいて半角のゼロとオーはまったく同一の形状をしており、区別が付かない。同様に、半角のI(アイ)とl(エル)の区別、全角のハイフンと長音の区別も付かない。この辺りの区別が重要になる人は要注意だ。
UnDoはよくわからない一段階のみ。さらにフリーズ。
UnDo(Ctrl-Z)は一段階のみサポートされる(もう一度押すとReDo)。しかし、その段階の決まり方が謎で、文字確定部分でもなく、よくわからないアルゴリズムで決められたある箇所に戻るという仕様。
しかも、UnDoを繰り返しているとフリーズしたと言う報告が複数挙げられている。【ポメラ】デジタルメモ pomera part7【DM10】ではポメラをフリーズさせる手順が解析されている。
- Ctrl-Nで新規作成
- ああ と2文字打つ
- Backspace長押しで2文字消す
- ああ と2文字打つ
- Ctrl-Zを二回入力
- Backspaceを入力→フリーズ
どうも、ファイル末端記号を上書きすることによるバグらしく、ファイル末尾で再現するらしい。このように、Undoにはバグが潜んでいるので、仕事用に重要な議事録を取る際にUndoを使うのはやめておいた方がよいだろう。
このバグは2009年1月より提供されたファームウェアバージョンアップによって解消された。
使えるショートカットキーは限定される
ITmediaで検証されているとおり、ポメラでもある程度のショートカットキーは利用可能だ。しかし、FEPのキーバインドはATOKないしはMS-IME形式に限定されており、それ以外の変更は一切出来ない。CtrlとCapsLockの入れ替えも行えず、UNIX使いの方々にはストレスとなるだろう。CtrlとCapsLockの入れ替えさえできれば個人的には使い勝手が大きく改善するのだが、対応の予定もないようで残念だ。
ただ、頭からひたすら文章を入力する用途に限った場合、カーソル移動やFEPの文節長短などは思ったより利用する機会が少ない。よく利用するBackspaceキーが小さく、慣れるまではホームポジションから指がずれてしまうので、これがCtrl-Hで利用できればと思わなくもない*1。
むしろ、ファイル保存のCtrl-SやファイルオープンのCtrl-Oなどが最もCtrlキーを利用する機会が多くなる操作だと考えられる。Ctrlキーが小指の横にあることに慣れきっているUNIX使いは、いちいち操作を中断されて戸惑うこととなるだろう。もっとも慣れるまでの辛抱かもしれないが。
アイデアメモとしての用途は想定外
Windows用のメモ書きソフトとして定番となっている紙copiというアプリケーションがある。このソフトは今でこそスクラップ機能が前面に押し出されているが、基本的にはメモ書きソフトであり、そのための工夫が随所に凝らされている。たとえば紙copiでは、各テキストの冒頭行がファイル名となり自動的に保存されるため、ユーザは保存を意識する必要がない。先頭行が空行の場合には日付からファイル名が生成される。また、文末に自動的に生成時刻を挿入するオプションもある。ユーザはなにかを思いついたときに紙copiを開いて、何も考えず入力するだけで全てがうまく管理される。
一方、ポメラは保存操作が必要であり、デフォルトでは「無題」というファイル名しか付かない。「無題」というファイル名が既にある場合には、「上書きしますか?」と無粋に尋ねてくる。「無題2」のように後ろに数字をインクリメントしてつけてくれたりはしない。また、ポメラでは、F2キーで「2008/11/12 7:41」というように日付、時刻をショートカットで入力することが可能だが、これはファイル名登録には利用できない*2。そのため、ユーザはどんな内容のないメモに対しても、毎回何らかのファイル名を考え入力する手間を強いられる。これはささやかではあるが、思いついたことをメモするという使い方からするとマイナス要因となる。
ポメラは電源をOFFにしても元の状態を復元するのでひとつのファイルにどんどん追記すればよいと言う考え方もあるだろう。しかし電源断からの復帰時には、カーソル位置が保存されないので、毎回文末までスクロールする必要があるし、どこかの時点でファイル名をつけなければならない点は同一だ。
それでもポメラを買う理由
結局、ポメラは腰を据えて議事録などまとまった入力をする用途のみに特化されており、それ以外の用途に利用しようとするといろいろと不満点が出てくる。最後にポメラの利点を再度確認すると次の点が挙げられる。
- キーボードはブラインドタッチに十分な大きさがあり、高速に入力できる。入力取り戻しもほぼない。巷のスマートフォンやPDAは相手にならない。
- キーボードの折りたたみギミックにより、ノートPCよりは小型である。
- いらない機能が入ってないので動作が機敏であり、サクサク使える。
- 連続稼働時間は20時間、電源OFF時のバッテリ消耗はほとんどないので、一週間ぐらいは普通に持つ。
これらの利点は待ち望んでいたユーザも多く、ポメラを魅力的な端末にしている。ポメラは機能をテキスト入力という特定用途に特化することをコンセプトに開発されたガジェットだ。そのため、ポメラ購入に当たっては、自分の想定用途がポメラのコンセプトに合致しているのか、あるいはすりあわせることが出来るのかという点を見定めなければならない。ポメラのコンセプトはすばらしい、しかし、そのコンセプトに合うユーザがどれだけいるかについては、筆者のようなアーリーアダプタが飛びついた後の、これからのポメラの売上の多寡が証明することとなるだろう。
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