日本企業が求めるTOEICスコアは低すぎて役に立たない
英語タウンでは、実際に海外やビジネスで利用できるTOEICスコアを紹介している。TOEICスコアを求める企業で紹介されている、有名企業が求めるTOEICスコア一覧とJOINして表示すると次の通りだ。
TOEICスコア | 参考スコア | 実際の能力 | 他テストとの比較 |
---|---|---|---|
990点 | ネイティブと間違われる!? | ||
940点 | 教養のあるネイティブの平均 | 国連英検特A級 英検1級 |
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900点 | 韓国LG・新入社員平均 松下電器(国際広報担当) |
日常会話や業務が英語でこなせる | 国連英検A級 英検準1級 |
860点 | 富士通(海外出張が頻繁にある営業・技術者) 三菱商事(社内留学条件) |
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800点 | 日立製作所(経営幹部候補) KDDI(事務職・技術職の配属・異動の基準スコア800点以上) 韓国HYUNDAI(新入社員足きり点数) LG電子(新入社員足きり点数) |
日常会話や海外でトラブルにも対処できる | |
790点 | 外資系求人サイトでの応募資格としてTOEICスコアを必要とする企業の平均 | ||
730点 | 日本IBM(次長昇格条件) 三菱商事(将来、課長クラスの基準スコアは730点以上に引き上げ) |
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700点 | 旭化成(新卒採用) ブリジストン(新卒採用) 東京電力(新卒採用) 三菱自動車の事務職(新卒採用) 伊藤忠商事(入社4年以内に700点以上) キリンビール(事務職・技術職の配属・異動の基準スコア700点以上) |
仕事や海外で最低限のコミュニケーションがとれる | 国連英検B級 |
650点 | 国際ビジネスコミュニケーション協会(TOEICを運営)会長スコア 日立製作所(課長昇格条件) |
英検2級 | |
600点 | あいおい損害保険(600点で1万円、730点で2万円の手当て) 富士通(エンジニア・事業企画担当) 住友商事(600点未満の新人総合職は英語研修実施) トヨタ自動車(係長昇格の条件) NEC(全社員の目標スコア) キヤノン(海外赴任者・国際業務従事者) 三井物産(入社時の最低基準) 富士通(入社2年目に社員に求める目安) 日本IBM(課長昇格の条件) 丸紅(入社5年目の条件) 日立製作所(総合職の入社2年目の期待値) 横浜ゴム(全社員の目標スコア) 日本ビクター(全社員の目標スコア) |
海外旅行で買い物ができ、食べたいものをオーダーできる | |
580点 | 三菱商事(全社員に求める最低基準) | ||
550点 | 住友金属工業(全社員の目標) | ||
500点 | 企業が新卒者に求めるスコア 帝人(課長級以上) |
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470点 | 旭硝子(課長補佐) | ||
450点 | 日本の大卒新入社員平均(海外経験なし) 松下電器(主任昇格の条件) |
海外旅行で英語の標識が読める | 英検準2級 |
300点以下 | 英語が苦手だった大卒者 | 英語でのコミュニケーションはかなり難しい(はっきり言うと、不可能?) | 英検5級(中学初級程度・・・) |
驚くのは韓国企業に求められる英語力の高さだ*1。韓国LGの新入社員の平均が900点。韓国HYUNDAIの新入社員の足きり点が800点。それに引き換え、日本企業が新入社員に求めるスコアが500点。実際の平均スコアは450点と言う惨状だ。900点と450点では点数差以上の英語力の圧倒的な差がある。
ところが、筆者の経験上TOEIC500点ではほとんど英語でコミュニケーションできないのと等しいレベルだ。700点でもビジネスに活用するには心許ない。松下電器の主任昇格の条件である450点は何かの冗談か?と思ってしまう*2。日本を代表する一流企業の社員でこのレベルでは、高い英語力を有する韓国企業に国際競争において水を空けられるのも仕方ないだろう。
ちなみに、筆者のTOEICスコアは900+というレベルにある。点数の上では松下で国際広報担当にも就けるレベルにあることになるが(それでも韓国LGの新入社員の平均点に過ぎない)、仕事で使わない語彙が頻発するCNNを聞いても1/3も理解できない。仕事の話をする分にはあまり困らないが、日常会話に移ると知らない単語が頻出し困ることが多い。結局、仕事上の実感としては、上記の表にもあるようにTOEIC900点でようやく最低限の仕事になるかというレベルなのだ。
ビジネスをネイティブに引けを取らず行うためには、TOEICにおいて少なくとも950点以上のスコアが必須であるように思う(ちなみにTOEIC900点と950点の間には、中学生と大学生ぐらいの物凄いレベル差が存在する)。その点、日本企業が社員に求める条件はあまりに低すぎる。役に立たないレベルの点数を求めてどうするんだか。
インターネット上の利用言語の約8割が英語であると言われている。Wikipediaひとつ取ってみても、英語版が質・量とも日本語版を圧倒している。日本語版が英語版に比べて優れているのは、ほとんどアニメや漫画といった分野のみといっても過言ではない(もちろん、それはそれで日本語版Wikipediaの素晴らしい成果ではある)。もし、英語がすらすらとストレスなく読めたらなんて素晴らしいのだろうと思わない日はないし、どんなにか仕事が楽になるだろうと想像するだけでネイティブが羨ましくなる。中学生でもNatureが苦労なく読めるなんて!(冗談です。読めはしますが理解はできません)
英語力の向上のためには義務教育における英語教育の拡充が欠かせない。上海やシンガポールのように英語を第二公用語とするのも効果的だと思うので、政府にはぜひ実現に向けて具体的な活動を推進してもらいたい。問題は、英語ばっかり重視していたらいつの間にか中国語のほうが求められる時代に変わっていたという状況が起こり得るということだが、少なくとも技術情報の発信はここしばらくの間は英語が主流でありつづけることは間違いない。翻訳システムが実用になるのを待っていては遅すぎる。
なにかひとつあなたの望みをかなえてあげると言われれば、英語を不自由なく操れる能力が欲しい。
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