5回もの日韓戦を生んだWBCの歪んだ商業主義

WBC日本代表は見事米国に快勝し明日の決勝戦にコマを進めることとなった。決勝の相手は韓国。なんと決勝を含む全試合9試合中半分以上の5試合が韓国戦、2試合がキューバ戦、残りが中国、米国という明らかに偏った組合せとなっている。一種の敗者復活戦となるダブルエリミネーション方式があるとは言え、異常としか言いようがない。

対戦組み合わせを見ると、その理由が分かる。日本で行われたアジア地区1次ラウンドで韓国と同組になるのは地理的条件を考慮すると仕方ない面があるだろう。しかし、なぜ1次ラウンドで対戦したチームを2次ラウンドの同じ組に入れる必要があるのか。公平性を期すならばラウンドごとに各組1・2位のクロス方式にするべきなのは明らかだ。

すべては金のため

中央日報はその不自然な組合せがなされた理由について、WBC組織委が興行のためわざと韓国と日本を2次ラウンドでも同じ組に配置したという関係者の証言を紹介している。その理由は次の2つだ。

  • 第1回のWBCにおいて平均観客動員数が4万人を越えた人気カードの韓日戦をなるべく多く設定したいとする大会組織委の意向がはたらいた。
  • 日本と韓国を別の組に分けると、片方を東部地域のマイアミで行われる2組に振り分ける必要があるが、そうするとアジアでは明け方から朝の時間帯に試合が行われ、TV中継権の販売に影響が出るので、西部地域の1組に集めた。

また、ジャーナリストの上杉隆氏は米国が準決勝まで強豪と対決しない仕組みとしたためだとしている。米国は、日本、韓国、キューバなどの強豪と準決勝まで対戦が無いため、準決勝への進出が組合せの時点でほとんど約束されていたという。

理想はどこに行ったのか

大会の運営も慈善事業ではないのだから、事業性を考慮しなければならないのは理解が出来る。人気の対戦を増やし、視聴者の利便性の高い時間に試合を設定し、開催国のチームが勝ち上がるようにホームアドバンテージを設定するのは、ある意味顧客の要望を満たそうとした経営努力であると言えるかも知れない。

しかし、スポーツは公平なルール、同一条件下で行われるから面白いのであり、ある特定のチームに有利であったり、不利であったりすればスポーツそのものの面白さを損なうこととなる。筆者は韓国ばかりでなく、もっと多くの普段対戦しないような国と侍JAPANがどんな戦いをするのか見たかった。公式球やストライクゾーンなども特定のリーグ所属選手に有利にならないように決めることは出来ないのか*1

残念なことにWBCが盛り上がっているのは日本や韓国を中心とする一部のアジアに限られ、本場であるはずの米国ではまったくと言っていいほど注目されていないという。真の世界一を決める国際大会として創設されたWBCだが、主催国の米国でさえ最強のメンバーを揃えられず、各国の総力戦になっていない。また、有利不利が明らかに分かれる不公平な組み分けとルールにより必ずしも強いチームが上位に進めるワケではない(台湾は世界屈指の戦力を誇るが、世界1位2位の日韓と同組ではいつまで経っても2次リーグに進めない)。実体はMLBのための選手見本市に過ぎず、そりゃ米国民からそっぽを向かれるのも仕方がないだろう。普段から見られるMLBにはより良い選手とチームがより面白いゲームを数多くこなしているのだから。

バレーボールの場合

商業主義がスポーツの前提を歪めている例としてバレーボールが挙げられる。ご存じの通り、それぞれ4年に1度開催されるワールドカップワールドグランドチャンピオンズカップは共に常に日本で開催される。2006年に日本で開催された世界選手権は女子については次回の2010年も日本で開催される。五輪最終予選も日本で開催されることが多い。日本チームは主な国際大会で常にホームゲームとなるアドバンテージを得ているわけだ。

この明らかに不公平な運営は、世界中でバレーボールで視聴率が取れる国が日本しかないという事情による*2。日本のテレビ局の要請により*3、日本戦に関しては試合時間が固定され、2006年の世界選手権ではとうとう勝戦が日本の出場する順位決定戦の前座として設定された。その大会では6位に終わった日本から竹下がMVPとして選出されるなど、あからさまな日本びいきが目立った。

こうした不公平な運営に対して、他国からは不満の声が上がり、また日本の弱体化の一因となったとも指摘されている。観客の大声援を受けたホームの試合に慣れきった日本チームがアウェイで十全の実力を発揮できるとはとても思えない。普通の国際大会では、試合の開始時間は一定せず、コンディションを合わせるのも慣れが必要だろう。過度な商業主義が、日本チームの弱体化を招き、ひいてはバレーボールそのものの人気を奪っていったと言えるだろう。

WBCの向かうべき方向

大会組織委はWBCの理念に立ち返り、真の世界一を決める大会を実現するにはどうすれば良いかをもう一度考え直すべきだろう。現状の不公平な運営は、長い目で見れば参加チームの弱体化と、野球に対する関心の低下を招くことはバレーボールの例を見るまでもなく明らかだ。

真の世界一を決める大会が見たい。

*1:世界的に見ればMLBが支配的なので、ルールをメジャーに合わせるのは理に適っているとは思う

*2:FIVBのルーベン・アコスタ会長が大の日本びいきという点も大きな要因の一つらしい。ルーベン・アコスタ会長は「女子はブルマーでなくてはいけない」と発言し、ブルマー着用を義務づけた規約を作ってブルマー定着を図ったが失敗に終わったアコスタの乱で知られている。ただし、ブルマー義務化には失敗したが、ビーチバレーのビキニ着用の義務化には成功した。ビーチバレーにおける女性のビキニ規定は異様に細かく、「タンクトップとブリーフのセパレート型、もしくはワンピース型(上半身、下半身一体型)のユニフォームを着用する。タンクトップは体にぴったりと密着したもので、袖ぐりは背中に深く、また胸の上部と腹部は大きくカットされたものとする。ブリーフはぴったりとしたもので、裾は左右が上向きにカットされ、サイドは7cm以下とする。ワンピース型もぴったりと体に密着するもので、背中と胸の上部は開いたものとする。トップ、ブリーフ、ワンピース型は明るく鮮やかな色とする。」というもので、氏の執念を感じざるを得ない。

*3:なお、リベロ制、ラリーポイント制の導入も日本のテレビ局のためのルール改正であると言え、特にラリーポイント制の導入によって試合時間が短縮されTV中継が行いやすくなった。逆に得点差のある状況からの逆転が難しくなるなどの弊害が指摘されている。これらのルール改正により、バレーボールがTVで見て楽しいコンテンツになった面があることは確かであり、一概に悪とは言い切れない。