死体をバラバラにする10の理由

15日朝、17歳の少年が母親を殺害、切断した頭部を持って警察に出頭するという事件が発生した。14日早朝には、2ちゃんねるに犯行声明ともとれる書き込みがあったことが確認されており、現在その関連性について調査が行われている。

書き込みがあったのは、2ちゃんねる内のテレビ局について論評するスレッド。14日午後9時2分に「母親殺してきた」というタイトルの掲示板が立ち上げられ、同一人物が「『なんで…なんで…』ってヒーヒー言ってたよ。クックック」などと書き込んでいた。その後、同じIDの人物は約2時間にわたり、「アハハ」など笑い声を示す書き込みを10回以上繰り返していた。

産経ニュース

本当になぜ実の息子に殺されなければならないのか、心底不思議だったのだろう。ご冥福をお祈りしたい。

今回の事件は、切断した頭部を持って警察に出頭するという前代未聞の行動についても注目を集めている。最近はバラバラ殺人も珍しくなくなってきた感があるが、なぜ死体をバラバラに仕様とするのか、Wikipediaを参考に、その理由について考えてみたい。というか、まとめていて気分が悪くなってきたので、読まないことをおすすめする。当日記初の続きを読む導入(一覧ページでしか機能しません)。

バラバラにすること自体に意味がある場合

1.性的興奮を得る

世の中には肉体を損壊させることで性的興奮を得るような異常者も存在するらしく、極めて稀だが異常性愛が動機のバラバラ殺人事件も存在する。

2.恨みを晴らす

相手に対する憎しみが高じて死体をバラバラにする場合もある。1983年、競売物件の取引をめぐるトラブルから幼い子供を含む一家5人が殺害された練馬一家5人殺害事件が代表例となる。また、暴力団抗争における制裁等もこのカテゴリに含まれるだろう。

3.見立て殺人

何らかの伝説などになぞらえてバラバラにする場合。たまにアート目的だったりする。ミステリでしか見たことがない。

偽装工作としてバラバラにする場合

4.死体の存在・身元を隠す

DNA鑑定の発達した現在ではあまり意味をなさなくなってきたが、バラバラにして人体の特徴的なパーツを散逸させることで、死体の身元を隠し、犯行が明るみに出るのを防ぐ。1994年に起きた井の頭公園バラバラ殺人事件においては、公園のゴミ箱から発見された遺体は、頭部と胴体がなく27個の部品に20cm間隔に切断され、指紋は削り取られ、血液も完全に抜かれていた。未だ未解決事件であり、犯人の意図が成功した例である。また、2002年に発覚した北九州監禁殺人事件では、家族6人に殺し合いをさせ、児童にまで殺人や遺体の解体を行わせていたが、遺体は全て解体された後、鍋で煮込まれ、海や公衆便所などに投棄されたため、長年にわたり犯行が発覚しなかった。死体を上手く処理することで事件の存在自体を隠蔽できれば、犯人は易々と逃げ延びることができるだろう。

追記:2008年4月18日に発覚した江東マンション神隠し殺人事件では、被害者の遺体を細かく解体して下水に流したり、ゴミ捨て場に小分けにして捨てるなどして2週間ほどで遺体を処理していた。犯人逮捕後、下水管にわずかに残った遺体肉片のDNAが被害者のものと一致している。本件においては死体の隠蔽は一月ほど逮捕の時期を遅らせるほどの効果しかなかった。街中に配置された監視カメラ群による被害者/容疑者行動のトレース、DNA鑑定などの科学捜査の前には、死体はその一部でも見つかればアウトで、完全犯罪のためには死体そのものを完全に隠蔽することが必要と言うことだろう。

5.死体の身元を誤認させる

死体の身元を隠すために首を切断するというのは、ミステリのトリックとしては常套手段だが、実例としてそのような話があるかどうかは知らない。しかしDNA鑑定が整備された現在においては、あまり意味がある行動とは言えないだろう。ミステリにおいて首無し死体や切断された死体の一部だけが発見された場合などには、殺されたのは本人かどうか疑ってかかる必要がある。

6.他の証拠・事実を隠す

こちらもミステリの域を出ないが、犯人に結びつくような特徴的な手段で殺害に至ってしまった場合、その痕跡を隠すために死体をバラバラにしてしまうケースがある。致命傷の原因となった部位を切断することで、死因の解明を阻害することができる。また、痕跡を完全に消せなくても、バラバラ殺人という衝撃的な事実を示すことで、他の重要な証拠・事実から他人の目を逸らす効果がある。普通に殺された場合、真っ先に疑われる立場にいる人物が犯行に至った場合、犯人の可能性を広げるためにわざと派手な殺し方をする場合などもこれに含まれるだろう。

7.アリバイ作り

バラバラにした複数人の死体の一部を順番に発見させるが、実は殺害の順番が異ならせることで、アリバイを作る場合が該当する。アリバイ作りのために多くの殺人をするという本末転倒な行為であり、やはりミステリに限定か。犯行推定時刻をずらすのであれば、もっと他にやりようがあるだろう。

他の必要がありバラバラにする場合

8.食べる

カニバリズムないしは食人と呼ばれる異常嗜好が動機。パリ人肉事件は1981年フランスで発生した事件だが、犯人は被害者を殺害後、陵辱し、遺体の一部を生のまま食べ、また遺体を解体し写真を撮影して遺体の一部をフライパンなどで調理して食べたとされる。東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件の宮崎努も殺害した女児の指をもぎ、醤油をかけて食べたとされる。

9.運搬/収納する

成人の体を運搬したり収納したりしようとすると大変なので、小さくバラバラにして運搬/収納しやすくするのは割と妥当な動機らしい。2006年に発生した新宿・渋谷エリートバラバラ殺人事件では、妻が夫の死体を隠蔽する際に一人で持ち運べないのでバラバラにしたと供述している。1994年に発生した福岡美容師バラバラ殺人事件においても、犯人の女性が遺体を運搬するために解体を行ったことが判明しており、バラバラ殺人の最も普遍的かつ理に適った動機であると言える。ミステリでは、大きいままだと通らない隙間を通したり、密室殺人など他のトリックと組み合わせて利用される。

10.殺人をアピールする

殺人をアピールするために、その一部を持ち歩く。戦国時代における首級と同様の考えだが、1997年の神戸連続児童殺傷事件(酒鬼薔薇事件)では、被害者の少年の頭部が声明文とともに中学校の正門前に置かれていた。海外の例では劇場型犯罪の元祖とされる切り裂きジャックが有名。運搬目的とも一部重なるが、今回の17歳の犯行も警察に殺人の明白な証拠を突きつけるという目的があったと考えられる。

まとめ

実際に起こった事件を見てみると、基本的には事件の発覚を恐れ、死体、可能ならば犯行自体を隠蔽する事を目的として、死体をバラバラにするケースが多いようだ。死体の切断作業には多大な労力と時間を要することは容易に想像できるが、それでもバラバラ殺人が後を絶たないのは死体さえ見つからなければ安心だという心理が働くからだろう。実際、死体が発見されずに殺人罪が立件された例は極めて少ない。ある人が突然蒸発しても死体さえ見つからなければ、単なる行方不明者として扱われ、本格的な捜査が始まらなければ自分の身は安泰というわけである。多少のリスクは承知の上で、死体の切断、隠蔽を行う犯人がいるのも無理からぬ事だろう。

その点今回は、事件の隠蔽ではなくその逆の事件の発覚を目的としたバラバラ殺人であり、稀なケースであるといえる。単純に殺害を自供するだけならば、首を持参する必要はなく、世間の反応が楽しみだったという面もあるのだろう。少年がやったとすれば2ちゃんねるへの書き込みもアピール目的として説明がつく行動であり、劇場型犯罪の一種といえる。個人による情報発信が簡単に行えるインターネットの普及により劇場型犯罪がより行いやすい環境が整っている気がする。この種の犯罪がエスカレートするのも時間の問題だろうか。