10億円ポンと寄付する人と、たかる人

11月16日に神奈川県の横溝千鶴子さん(88)が同県南足柄市に10億円を現金で寄付し話題となった。横溝さんは99年にも大磯町に5億円寄付しており、地域の教育・福祉関係に多額の貢献をされているようだ。

10億円は調理場設備関係の会社の利益を元手に無駄遣いをせずにこつこつと貯めて捻出したものということで、これまでタクシーに乗らず、外食ですら一度もしたことがないと言うから徹底している(ただし、節約だけで10億円貯めたわけではない)。

 「四十数年前、米寿のこの日に10億円を贈ろうと目標を立て節約してきた。ふるさとに恩返しできたのは人生最大の幸せです。子供たちの教育のため、命ある限り努力を続けたい」と穏やかな笑みを浮かべた。

http://hochi.yomiuri.co.jp/topics/news/20071117-OHT1T00085.htm

自分は贅沢せずに、後の世代のために10億円も拠出するというのはなかなかできそうにない。たとえ、自分の手元に10億円余っていたとしてもそれを行政に寄付することができるとはとても思えない。子供がおられないようで、地域の子供達のためにできる限りの援助をすることがこの人の生き甲斐になっているのだろうと思う。立派だが一抹の寂しさを覚えるのは筆者だけではないだろう。

それよりも情けないのは、どこからとも無く彼女に金の無心をする輩が現れることだ。

 5億円の寄付が報道されたときには「今、首くくる寸前です…」などと無心の電話が殺到したという。「『80の老人に頼るのか!』と怒ってやった」。自分で働ける人間には厳しい。子供のいない横溝さんには、親せきはいるが「『私に遺産はないよ』と言ってある。でももし子供がいても同じことをしますよ」

http://hochi.yomiuri.co.jp/topics/news/20071117-OHT1T00085.htm

以前に5億円寄付した時にも無心の電話が殺到したそうだから、今度もまた同じことになるんじゃないかと思っていたら案の定、ZAKZAKが続報を伝えている。

 巨額の寄付が報じられてから、「私を助けてほしい」といった電話や訪問客が相次ぎ、手紙も30通届いた。「父を救ってください」と玄関先で涙ながらに話す女性もいたが、「私は人間の基礎づくりをしようとしているのです。人生の“結果”にはかかわりません」と受け付けなかった。

http://www.zakzak.co.jp/top/2007_12/t2007120501_all.html

彼女は次代を担う子供達のために援助をしようとしているのに、いい大人が見ず知らずの人に金の無心をするのは、受け入れられるわけがないし、心底情けない。そうした人々はもとより彼女の眼中にない。彼女は寄付の目的を次のように語っている

子供のヤル気を起こさせて個性をのばせるよう、10億円で国債を購入し、1年分の利回り2500万円を教育や奨学金として使っていただきます。今後は先生を教育する『横溝塾』の創設も考えています。今は子供をあまりにも平等に扱い過ぎる。競争がなければ成長はありません。これからの教育にお金を役立て、さらに、私のように寄付をする人が全国に現れてくれれば、日本もよい国になるでしょう

http://www.zakzak.co.jp/top/2007_12/t2007120501_all.html

自分の周りのことしか見えていない恥知らずの大人達と、日本という国家の行く末を憂い、少しでも良い社会になるよう尽力する彼女とは、滑稽なほどに立ち位置が異なる。志は高くありたいものだ。